2011年10月8日土曜日

2巻 その16~その18 曹操の裁判

2巻 その16~その18 曹操の裁判

「その16 帝」



宦官張譲が裁判官橋玄(きょうげん)にプレッシャーをかえるシーン

張譲

「あの曹操という小僧の罪状は明らかです。

斬首(ざんしゅ)以外に妥当なる刑はございませぬ。

だが、厳格な裁きが曹操に殺(さつ)を下せぬ時は

裁いた人間に殺を下すのは私の務め」


コメント

ちかごろまともな裁きをできない裁判官が多い。
「まともな裁きができない裁判官、検察官、警官に罰を下すのは国民の務め。不正な官僚は罷免しよう。」




「その17 鬼神」

裁判官橋玄の独白

「張譲は帝の印璽を預かり思いのままに詔勅(しょうちょく)を発することができると聞く。

法の番人 橋玄よ。

己は詔勅に抗(あがな)ってまでも法に仕えることができるのか。」





曹操の裁判

橋玄
「曹操 字(あざな)は孟徳 沛(はい)の人 曹騰(そうとう)の孫にして曹嵩(そうすう)の長男 現在 洛陽に住まう齢(よわい)16歳

以上に相違はないか?」

曹操 「はい」

橋玄
「審議を行う前にひとついっておく。

私は法に仕える人間である。


私の前で虚偽を申さば断首である。ただ真実のみ申せ。」


 橋玄
「過日 きみは中常侍(ちゅうじょうじ)張譲様の屋敷に乱入し、水晶なる使用人を拉致せんと18名を殺傷して逃亡したこと相違ないか?」

曹操「正確ではない」

橋玄「どこがどのように正確ではないのだ?」

曹操
「まず乱入ではない!

私は武器をたずさえず正面玄関で案内を乞うた。

そして水晶を妻にするため彼女の返還を求めたのだ!

拉致ではない。

張譲は返還を断る正当な理由がないにもかかわらず、それを拒み、衛兵に剣を抜かせた。

私がそこで15人を殺し3人を傷つけたといわれれば、そうだと答えよう。

しかし、法によればそれは正当なる防衛というものだ!

むしろ罪は張譲にある。

水晶を殺すばかりか屍にも辱めを与えたあの卑劣漢こそ、ここで断罪されねばならない!」

橋玄「張譲様の証言によれば、きみは水晶を強奪しようとし」

曹操「返還を強奪というならそうだ!」

橋玄「その際にそれを止めに入った張譲様の頬を剣で切りつけ傷を負わせ、さらに」
 
曹操「私なら奴の首をはねている!」

橋玄「逆上したきみは逃げる時に水晶も殺している」

曹操「妻にするのが1日遅れたことを罪とするならば、私が水晶を殺したことになる」
 
橋玄「多くの衛兵も張譲様の証言を裏付けておる!

この世で これを否定するのは きみの叫びのみだ。

きみだけが きみを弁護しておる!

それともなにか! きみの他に誰かそれを見ていた者がいるのか?」

曹操「いる」

橋玄「誰だ!それは」

曹操「天だ」

「その18 天の法衣」

曹操
「水晶は死に 衛兵は口を封じられ 佞臣(ねいしん)は虚言を吐けども
 
天の眼はあざむけぬ」
 
橋玄「天? とな
 
人は助命を乞うために何でもいうものだ!

しかし 人は天のことを知ることはできぬ!」
 
曹操
「天を知らずして法に従うとは笑止ではないか!
 
あなたは法の正しさを疑わぬが では 法はなにゆえ正しいか

法は 天意に則(のっと)った時にのみ正しい」

橋玄
「私に向かって法を説くか!

これより先の記録は一言も漏らすでないぞ

きみは天を語り 法を語る だが 天は証言せぬ!

曹操 最後にひとつ訊く

天がきみに命を与えたらきみは何をする!?

もし このまま生きられるなら天下で何をしたいのか!?」

曹操

「漢朝400年 帝室乱れ 国病む

王者に覇気なく 外戚(がいせき)・宦官の害甚だしく

天下は怨念不満に満つ

民草貧しく 悪官汚吏(あっかんおり)利をむさぼる

これ獣畜生の世といわずして なんといおうや!

これを裁かずして正柱(せいちゅう)を律さずして天下の正義はない!

そもそも国家とは万民の大義! 天下の大義なり

しかし かつて天下の大義をもって世を治めた覇者はおらぬ!

曹操孟徳 今 覇者に非(あら)ず 然れども 天下の大義を知る

天が機会を与えるならば 我 天下を治るに至る!」

橋玄
「法の衣を纏うがよい!

わしの名は司法官の橋玄である

きみは種になる人間だ
 
いかなるものに育つ種かは分からぬが

少なくとも治世においては姦賊の類であろう しかし

きみの語るように この世はまさに乱世

君は英雄を志し なお 英雄となりこの乱世を治め得る人間か!?

人はきみを乱世においても姦雄と呼ぶやもしれぬ

しかし 天と一体になっている若者を断ずるのは この橋玄の任務ではない!

その任務は天そのものに預けることにする!

曹操! 立てい! 去れい!

行けい 曹操孟徳」

橋玄独白「この裁きにより 我が人生は価値を得た」












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